Education

マーガレットタイム

豊かな感性を育む「命」の授業

0.1ミリメートルの受精卵だった命が、「生きる力」を身につけて母から誕生する。 すべての命に起こる奇跡です。わたしがここにいることも尊い奇跡のひとつ。そして、わたし自身も、次の命を育む可能性を秘めた存在です。
中学部では、 教科の枠を超えてさまざまな角度から「命」と向き合う、『マーガレットタイム*』という授業を大切にしています。
*校章のマーガレットの花ことばである、「希望に満ち溢れる清楚な乙女心」の思いを名称に込めています。

さまざまな 「 命 」と出会うマーガレットタイム

3つのテーマを通して命を学び、豊かな感性を育むカリキュラムです。 「観る」「聴く」「読む」だけでなく、自ら「調べる」「ふれる」を経験し、さらに「話す」「表現する」ことを通して、自分自身が「かけがえのないただ一人のわたし」であることを実感します。

自分の将来を見つめる「ドリームマップ」 自分の将来を見つめる「ドリームマップ」

1 年生 「わたし」と出会う

自我の確立の過渡期において、自分と他者の違いに不安を抱き、自信を失いがちになる1年生。誕生学講座で生命誕生の神秘にふれ、ドリームマップづくりで、将来に向き合います。

自然の恵みにふれる農業体験 自然の恵みにふれる農業体験

2年生「自然」と出会う

2年生で体験する林間学校の農業体験では、自然の恵みのありがたさを学ぶとともに、自分たちの身体をつくる「食」のルーツをたどります。わたしたちが「自然の命」をいただいて生きていることを知ることで、地球が抱える問題は自分の未来の課題であることに気づき、次の一歩へつなげます。

卒業生の新米ママと赤ちゃんと過ごすふれあい体験 卒業生の新米ママと赤ちゃんと過ごすふれあい体験

3年生「未来」と出会う

将来の姿を思い描き始める3年生では、女性として命を育む可能性を秘めた存在であることを視野に入れ、妊婦体験や赤ちゃんとふれあう体験をします。
自分を含む誰もが尊い存在であることを感じるとともに、女性としてのライフステージを意識することで、自分の生き方を主体的に描く姿勢が育まれます。

先生の声

自分の人生を「自分ごと」として踏みしめてほしい。

勉強や部活動、友だち付き合いと、何かと壁にぶつかることが多い中学生活。将来はまだ遠い存在で、自分が何者になるのかわからないといった、漠然とした不安を抱いています。それでも、人生は自分で切り拓いていかなくてはなりません。自分の人生を「自分ごと」として踏みしめてほしい。そのときそっと背中を押してくれるのが「自己肯定感」です。そこでわたしたちは、命の誕生や人の成長の奇跡を学ぶことで、自分自身も大切に育てられた「かけがえのない存在」であることを実感してもらいたいと思っています。

マーガレットタイムでは、自然の命をいただくこと、理不尽に命を奪う戦争、世界の食料事情や人権など、さまざまな角度から「命」について学びます。社会に目を向け、多くのかけがえのない命とのかかわりのなかで、自律的に自己を肯定し、女性としてどのように生きるかを考え、自分で自分の人生を切り拓く人になってもらいたいと考えています。

キャリア支援部長
堤 真美 先生

マーガレットタイム講座例

さまざまな角度から「命」と向き合う、マーガレットタイム講座例です。

成長を支える深い愛情に気づく

妊婦体験/離乳食講座

妊婦ジャケットを着て教室を歩いたり、離乳食をつくったりしながら、妊婦・育児体験をします。その過程で生まれる数多くの悩みや心配ごとを知ることで、自分を含むすべての命が深い愛情に包まれて育った存在であることに気づきます。そして、今ここにある自分の命は、多くの人から受け継いだものだという、連綿と続く人類の営みやその奇跡について考えます。

小さな命の重さを感じる

赤ちゃんふれあい体験

実際に新生児を抱っこする経験を通して、その存在の尊さを肌で感じます。その重さ、匂い、やわらかさは多くの生徒の記憶に深く残ります。また、新米ママから聞く妊娠や出産、育児についての経験談は、慣れない子育ての大変さとともに、それ以上のよろこびや幸せについて教えてくれます。女性のライフデザインのひとつについて考える機会となります。

命をいただく責任を学ぶ

農業体験/フードロス学習

林間学校の農業体験では、農家の方のお手伝いをしながら、日々食卓に並ぶ食材が、手間暇かけてつくられていることを体感します。また、毎日何万トンものまだ食べられる食料が捨てられている日本のフードロスの現状や食料事情などを学び、日常の「食」との向き合い方を考えます。

平和への誓いを胸に刻む

平和学習

戦争は一瞬にしてかけがえのない多くの命を理由なく奪い、残された者の心も深く傷つけます。遠い世界の出来事のように感じてしまいがちな戦争。文学や映像、語り部の方の言葉を通して戦争の悲惨さを学び、戦場となった沖縄の地を訪れ、平和を次世代につないでゆくために何ができるかを考えます。

他者を受け入れる姿勢を身につける

多様性を学ぶ

自然環境、貧困、紛争、社会福祉、ジェンダーなど、わたしたちを取り巻く多くの課題にふれます。障害のある方々や高齢者の日常などについて学び、社会課題や人の多様性を知り、受け入れることが、すべての命が尊重される社会につながることを学びます。そして、いま自分にできる小さな一歩を考え、実践します。

日々のなかから未来をつくる

キャリアデザイン

入学後に配付される「生活ノート」は、毎日の学習や部活動、休息や睡眠など一日の過ごし方を自分でデザインするツールです。定期試験の準備など先を読んで計画する習慣を身につけ、毎日積み重ねることで、自分をコントロールする力を養います。

マーガレットタイムレポート 『動物のいのちを考える〜伊勢原産牛乳プ ロジ ェクト酪農編〜 』

心を込めて 「いただきます」「ごちそうさま」。

  • 日時
    2018年12月3日 5、6時間目
  • 講師
    伊勢原市の酪農家のみなさん、神奈川県畜産センターのみなさん
  • 対象
    中学2年生

牛の一生と酪農家の一日

神奈川県には7千頭の牛がいて、そのうち伊勢原市には2千頭。今回は、県内一位の飼育数を誇る、伊勢原市の酪農家のみなさんと、それを支える畜産センターのみなさんが講師です。

県内有数の飼育数とはいえ、その数は10年前と比べると約1万7千頭も減少。酪農家の高齢化や後継者不足、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)で海外から安い製品が入ってきたことにより、年々牛も酪農家数も大きく減っているのが現状です。そうした閉塞感や危機感を打破するためにはじまったのが「伊勢原産牛乳プロジェクト」。地産地消の「自分たち」の牛乳をつくろうと、若手酪農家3名が立ち上がりました。

構想から4年半。紆余曲折がありながらも、消費者交流会などで地道にニーズを把握し、コンセプトを開発。メーカーと信頼関係を築き上げ、やっとできたのが『いせはら地ミルク』です。その開発秘話と酪農家の一日について話してくれました。

酪農家の朝はすごく早いそう。まだ陽が昇る前に起床して、5時から作業開始。牛の体調を観察し、小屋の掃除やエサやりを行ってから乳を絞ります。牛一頭からとれる牛乳の量は、一日30リットル。糞は肥料へ。昼間はエサをつくるために、トウモロコシや牧草の管理などが主な仕事です。そうした重労働を毎日行いながらも、牛の特性に合わせてエサの種類や与え方まで変えています。一頭一頭に名前をつけ、「家族のように大切に育てている」とのこと。

次は、絵本の読み聞かせ会です。相模女子大学の学生が、酪農家のみなさんの話をもとに絵本をつくりました。酪農家目線の語りから、牛乳一本にたくさんの物語があることがわかり、苦労とやりがいが同時に伝わってきます。

そのあと実際にみんなで飲んだ『いせはら地ミルク』の味は格別。「牛乳は苦手だけど、まるごと一本飲めて嬉しかった!」という声もありました。「ごちそうさまでした!」。