グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



 

金子 修介


崖っぷちの『ゴールド・ボーイ』

2024年3月1日

私の監督した映画『ゴールド・ボーイ』は、中国の紫金陳(ズー・ジンチェン)氏の小説『坏小孩(悪童たち)』を原作としている。この原作は物語の冒頭、青年教師が義父母を、山中の急峻な崖の景勝地から突き落として殺害するのが発端。それを偶然、遠方から少年たちが動画に撮っていた。彼らはどうするのか? 警察に届けるのかと思ったら、その教師を脅迫して金を奪ろうとする・・・というとんでも無い話である。

これを日本に置き換えようと、先ずは犯行現場を考えた。しかし、中国墨絵で見たような山の中の急峻な崖って日本にあるのか? 崖側からは、どこからも犯行が見えないだろうと思え、老夫婦が婿に連れて来られても不自然では無い観光地。なのに周りに人の気配が無い・・・う〜ん、そんな場所、日本には無い、無いんですよ!。観光地なら丸見えですよ、日本は。

それで相当悩み、山ではなく海の崖ならばと、沖縄で探した。が、有名観光地からは撮影は断られてしまった。実際に殺人も事故もあるから「人が落ちるのはやめて欲しい」と。そこでやっと見つけた私有地がOK。ロケーションはぴったりな、危ない感じ。でも、どうしてわざわざそんな危ないところへ老いた義父母が行く? その理由が無いではないか、という問題が発生。次はそこを考えないと。っていうか、すごい重要じゃないかそれは!

 で、脚本の港岳彦氏と考たのは原作にはない設定・・・義父が若い頃、義母に求婚する場所としてわざとそこを選び、何十年ぶりかで訪れるお供に娘婿を連れて来た。昔は「高嶺の花」だった義母。求婚された時の顔が怖かった、ここも怖かったわ、と昔話。そこへ娘婿がひとこと「崖っぷちで今の幸せをつかんだんですね」と港氏が名台詞を書いた・・・これで日本の『ゴールド・ボーイ』はスタート出来た。原作ものの映画化って、いろいろ難しい。オリジナル作るのと殆ど同じ苦労があり、常に崖っぷちなのです。

職 位:客員教授
学 歴:東京学芸大学教育学部 卒業

<監督作品>
『1999年の夏休み』(1988)、『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995)
『ガメラ2 レギオン襲来』(1996)『デスノート』(2006)
『プライド』(2009)、『リンキング・ラブ』(2017)
『信虎』(宮下玄覇共同監督)(2021)など多数



ページの先頭へ戻る