相模女子大学高等部

相模女子大学中学部高等部 
コラム 体育祭仮装行列

体育祭の伝統プログラム「仮装」満場一致で大賞に輝いた作品はこうして生まれた!

相模女子大学の体育祭には、60年以上続いてきた伝統の出し物があります。
その名も「仮装」。
高3がクラス単位で作品づくりに取り組み、成果を競い合います。
27年度は「すしざんまい」を題材にした、特進1組の「篠澤社長は大忙し!」が大賞を受賞。「狙っていただけに、喜びはひとしお」と語る、リーダー桝田さんと石井さんに、制作秘話を聞きました。

仮装とは
体育祭の午前の部、最後のプログラム。高3がクラスごとに出し物を披露し、審査員の評価により、大賞のほか、優秀賞・アイデア賞(2クラス)が決定。受賞したクラスは閉会式で発表され、表彰される。平成27年度の体育祭は9月12日(土)に行われた。(持ち時間1分・担任も含む全員参加)

プロフィール

桝田さん
特進コースでありながら、週6日、活動するモダンダンス部に所属。さらに球技大会、体育祭実行委員、応援団副団長をこなすかたわら、外部の絵本コンテストで最優秀賞を受賞するなど、持ち前のバイタリティで、密度の濃い高校3年間を過ごした。人とかかわることが好きで、卒業後は横浜国立大学に進学する。
石井さん
小学校時代からクラシックバレエと勉強を両立。中学部では、バレエを中断し、バトントワーリング部で活動したが、高等部では部活を辞めてバレエを再開。持ち前の集中力で、やりたいことをきちんとこなし、得意の英語にも磨きをかけてきた。卒業後は青山学院大学に進学する。

やるからには大賞をとる!二人の高い志が、最初はクラスで空回り

 石井さんは本校の中学部から高等部に進学。特進コースを選択し、公立中学校から入学した桝田さんと出会いました。毎年、クラス替えを行いますが二人は離れることなく、次第に関係を深めていく中で、「高3になったらやりたいね」と話していたのが体育祭の仮装委員でした。

桝田さん
高1、高2の体育祭で先輩たちの演技を見て、「おもしろそう!」「高3になったら作品づくりに携わって、一番になりたい!」って思ったんです。
石井さん
「私たちも取りたいね」と話していました。
桝田さん
委員を決める時に、他にもやりたい人がいるだろうと思っていたら、いませんでした。「どうぞ」「どうぞ」という雰囲気で、それは予想外でしたけど。よしやるぞ、と気合いが入りました。

 私たちのクラスは文系、理系混合のクラスで、多くの生徒が一般受験します。すでに受験体制に入っていたため、「夏休みは勉強に充てたい」と考える生徒が大半でした。ただ、「今しかできない行事だから楽しみたい」という二人に対して、邪魔をする人は一人もいません。二人は、9月12日(土)に行われる体育祭に向けて、題材選びから始めました。

石井さん
はじめから「ディズニー」や「ハリーポッター」などの定番ものは考えていませんでした。
桝田さん
豪先生だから「水戸豪門」というように、担任の先生の名前がはまるとアイデアが広がるのですが、うまくいくものがなくて。
石井さん
「すしざんまい」は苦肉の策でした。
桝田さん
仮装とは違うところで「おもしろいね」と話していた題材を、なんとかしようということになり、担任の篠澤先生に名物社長役をお願いすることにしました。

「すしざんまい」に決めた理由は、年配者が多い審査員の方も知っていそうな題材だったからです。ダンス部での創作活動に加え、外部のコンテストにも積極的に応募し、受賞経験をもつ桝田さんにとって、「観る人にどう伝わるか」が、もっとも大事なことでした。だから、構成にもこだわりました。「ただ踊ってもつまらないよ。ストーリー仕立てにしよう」「名物社長といえば競り」「回転寿司も絶対入れたい」「ちょっと待って。競り落としたマグロを解体しなければ回転寿司につながらないよね。解体ショーも必要なんじゃない?」と、二人で話しながらイメージをふくらませていきましたが、「それぞれの場面をどう見せるのか。どう人を動かすのか。そこが難しかった」と桝田さん。

桝田さん
家にいる時も、学校にいる時も、登下校時も、仮装のことばかり考えていました。
石井さん
次々にアイデアが出てくるからすごいよね。
桝田さん
なぜか授業中にひらめくことが多くて(笑)、授業が終わってから「これどう?」って伝えたこともあったよね。

ページの先頭へ

頭で想い描いていることを、クラスメイトと共有する難しさを痛感!

 すべてが決まったのは、9月に入ってからでした。夏休みに入る前に、稽古を始めているクラスもある中で、遅れを取っているのは明らか。せめて夏休みの間にできることをしようと、活動日を3日間、設けて、「都合のいい日に1日だけ手伝って」とクラスメイトに声をかけました。塾の夏期講習が入っている人も多く、反応は今ひとつでしたが、来てくれると信じて、自分たちでできることを進めることに。二人で買い出しに行き、フエルトを大量に買い込んで、桝田さんがミシンをかけたり、段ボールに下絵を描いたり。その作業量は膨大でしたが、「桝田さんには、自分一人でもやるよ、というバイタリティがある。そこがすごいところ」と石井さんが太鼓判を押すように、活動日までにいろいろなものができ上がりました。

石井さん
桝田さんが大きな荷物を抱えて登校すると「なに、これ〜」って、教室が涌いたよね。
桝田さん
夏休みの作業は、色を塗ってもらったり、フエルトを縫いつなげて形にしたものに中身を詰めてもらったり。物づくりしかできなかったんですけど、それだけでクラスのみんなが少し興味を持ってくれて、協力してくれる子が出てきてくれたのは嬉しかったです。

 あとは、自分の頭の中で描いている作品を、いかにクラスメイトと共有できるか。社長以外の配役をどうするか。「そこさえきちんとできれば、大賞は行けるっしょ」と、自信に満ちあふれている桝田さんに対して、慎重な石井さんは「まだ、物しかできていないのに、よくそう言えるね」と釘を刺します。そこで、新たな工夫が生まれることも少なくありません。

桝田さん
みんなに話す前に、いつもお昼ごはんを一緒に食べている仲間に作品の概要を話すと、わかってもらえなかったので、ただ、話すだけでは伝わらないんだと思いました。だから黒板に絵を描き、ここの移動が何秒、踊りが何秒というように、詳細を伝えました。
石井さん
競りの呼び込みをする人、解体ショーを手伝う人、お寿司を回転させる人……。いろいろな役割があるので、基本的には挙手制で、やりたいものを選んでもらいました。
桝田さん
体育が嫌いな子がいるので、「動きたくない人」と聞くと、10名くらい手が挙がるんです。その人たちにお寿司を回転させる役割をお願いしたら、意外とそこが一番大変になっちゃって(笑)。「ごめんね」という感じでした。

ページの先頭へ

桝田さん不在で迎えることになった体育祭当日。クラス全員の気持ちが一つになった。

 二人が頭で描いていたものを、全員で再現したのが、体育祭の週の月曜日。5時間目の体育と、6時間目のLHRの2時間で流れを確認し、火曜日から朝練を始めました。他のクラスに「おもしろそうなことをやっている」と認識され、クラスの中でも体育祭への意識が高まり始めた時に、台風が来て水曜日は休校に。貴重な一日を失い、残すところ2日。そんな切羽詰まった時に一大事が起きました。桝田さんが学校に来られなくなってしまったのです。

桝田さん
3、4日、寝不足だったし、のどが痛いなどの予兆はあったんですけど、水曜日に高熱が出ると下がらないんです。当日も39度以上ありました。体育祭に参加できなくても、せめて見に行く体力はあるかなと思いましたが、それすらなくて、大きな病院で点滴や検査を受けていました。
石井さん
私たちが、「当日も来られない」と聞いたのは、前日の放課後でした。振りつけが入っていないところがあったので、残れる子だけで練習している時に先生から話を聞いてショックを受けました。泣き出す子もいました。
桝田さん
本当に!?
石井さん
そうだよ。
桝田さん
私からは連絡できなかったんだよね。でも、休む前にだいたい終わってたし、必要なものはすべて学校にあったから、何とかしてくれるだろうと思っていました。

 リーダー不在で本番に臨むという、最大のピンチに石井さんが取った行動は、その日のうちに桝田さんを除くクラスメイト全員に声をかけて、事情を伝えることでした。

石井さん
「だから大賞をとりたいんだ」と気持ちを伝えると、クラスメイトのみんなから続々と「頑張る」という返事をもらえて、翌朝、学校で顔を合わせた時には「大賞をとる」という雰囲気になっていました。準備をするにしても、みんなのほうから「何をやればいい?」と聞いてきてくれて、やりやすかったです。

 そして本番。出番を待つ間に「言葉を交わさなくても、自然と気持ちは一つになっていた」と石井さんが言うように、チームワークが演技に発揮されました。

石井さん
一度もグラウンドで練習していなかったので、最後のソーラン節で隊形が乱れたように感じて心配しました。ただ、私たちのようなストーリーのある作品を創ったクラスが一つもなくて、まわりの子たちが「絶対、大賞だよ」と言ってくれたので、その言葉を信じて発表を待ちました。

ページの先頭へ

念願の大賞に輝き、大役を果たした石井さん。「やればできるという自信がつきました」

 閉会式では、アイデア賞(2クラス)・優秀賞・大賞の順に発表されます。

桝田さん
優秀賞で、隣のクラスが呼ばれた時、あせらなかった?
石井さん
それで「あっ、来た」と思ったよ。
桝田さん
あ〜、逆に。
石井さん
大賞か優秀賞か、どっちかだと思ってたの。
桝田さん
自信ついてるじゃん。
石井さん
その時はもう、ついてたよ。

 クラスを代表して賞状を受け取った石井さんが、誇らしかったのは言うまでもありません。そして、この喜びを早く桝田さんに伝えたいという気持ちでいっぱいでした。

石井さん
LINEで伝えたくなくて、電話をかけたけど出ないから、友達とムービーを送ろうということになったんです。それで、ノートに「取ったよ!」とかいろいろなメッセージを書いて送ったんです。
桝田さん
実はお母さんの友達から、「大賞をとったみたいよ」とは聞いていたんです。でも、病院から帰って、動画を見て、「本当にとれたんだ。よかった〜」って、しみじみ思いました。
石井さん
私はリーダーシップを取るほうじゃないので、桝田さんがいなかった数日間は本当に心細かったんです。みんなを引っ張っていくしかない立場に置かれて、やるしかない中で、数人の友達に支えてもらいました。最後はクラスのみんなも関心を向けてくれて、今思うと、準備の段階から、みんなが私たちの気持ちを感じてくれていたんだなと思います。それがわかってよかったし、貴重なリーダー経験もできて、やればできるという自信がつきました。
桝田さん
私は、何事にもエネルギーを発揮することが好きなので。本番こそ出られませんでしたが、みんなで力を合わせて、一番いい賞をとれたので言うことないです。

ページの先頭へ

幼稚部から大学までがワンキャンパスに集い、幅広い年代の人と交流できる環境が素晴らしい!

 体育祭で忘れられない思い出をつくり、進路も決まって卒業を惜しむ二人に、相模女子大学中学部、高等部について聞きました。

インタビュアー
- 二人の出会いを教えて。
桝田さん
入学式の後、教室で、話しかけてくれたよね。
石井さん
うん。話しかけた。友達を増やしたいなと思ってたから。
桝田さん
特進コースは高1から内進と外進が混ざるので、アウエーな感じがしてたんですけど、話しかけてもらって安心しました。
石井さん
毎年、クラス替えがありますが、桝田さんとはいつも一緒で、昨年のニュージーランド修学旅行あたりから、さらに距離が縮まった感じがします。
桝田さん
高3のクラスには、他に4人、賑やかな子たちがいるので、いつも6人でわちゃわちゃしています(笑)。
石井さん
私たち2人は文系ですが、4人は理系。桝田さんとは授業も一緒なので話す機会が多いです。
インタビュアー
- 女子校はどうですか。
桝田さん
中3の時に、女子校に進学すると言ったら、(中学時代の友達に)「こわいよ」って言われましたが、そういうのは全然ないですね。
石井さん
たしかに「女子校、こわっ」て言われる。
桝田さん
私は中学時代からわりとこんな感じでたけど、女子校で過ごしてさらにパワーアップしました(笑)。
インタビュアー
- こんな感じとは?
桝田さん
人を笑わせることが好き。おもしろいことがしたくて、いつもうずうずしています。
石井さん
(桝田さんの)やることなすことおもしろくて、いつも大爆笑です。
桝田さん
私はすべてに頑張ってしまうタイプ。何かあれば、とにかくやってみたいので、そういう意味では女子校でよかったと思います。球技大会実行委員、体育祭実行委員などもやりましたが、手を挙げればいろいろなことにチャレンジできます。
石井さん
桝田さんは何をやっても器用にこなすので、感心しきりです。
桝田さん
石井さんはなにをやってもぶきっちょなんですけど(笑)、できるんですよ。「できない〜」とか言うんですけど、できる。やっちゃう。効率もいいです。
石井さん
バレエを習っていますが、踊る時は踊る。勉強する時は勉強する。たしかに、けじめをつけて集中することは、できるほうかもしれません。
インタビュアー
- 学校の魅力を教えて。
桝田さん
幼稚部から大学までが一つのキャンパスにあるので、幅広い年代の人とかかわることができます。私は併設されている幼稚部で預かり保育のボランティアを経験。体育祭では、応援団副団長という立場で、中学1年生まで面倒を見ました。ダンスは高校から始めましたが、礼儀なども学べましたし、先生、コーチが指導してくださる環境で、成長できました。もともと人とかかわることが好きなので、大学では教育系の学部で学び、教育にかかわる仕事に就きたいと思っています。
石井さん
私は中学からここで過ごしています。高校から特進コースに入り、新しい友達ができました。行事も勉強も頑張ろうという雰囲気が好きで、まわりの人からたくさんの刺激をもらいましたし、自信もつきました。大学では国際系の学部で学び、好きな英語を活かせる仕事に就きたいと思っています。

TOP